本記事は、公的機関および査読付き学術論文により報告されている情報を整理したものです。特定の疾患の診断や治療を目的とするものではありません。急激な全身のむくみや呼吸困難などを伴う場合は、心臓や腎臓の疾患の可能性があるため、直ちに医療機関にご相談ください。
「朝起きると顔がむくんでいる」「夕方になると靴がきつい」。
多くの人が経験するこうした症状は、単なる水分の摂りすぎだけが原因ではありません。最新の医学研究では、体が何らかのダメージを受けた際に起こす「炎症反応」そのものが、水を溜め込む性質を持っていることが分かってきました。
本記事では、アレルギーや炎症によって引き起こされる「炎症性浮腫」と、意外な食品に隠された「塩分」のリスクについて、信頼できるデータをもとに解説します。
1. 炎症が起きると「水漏れ」する仕組み
体がアレルギー反応や炎症を起こすと、患部を守るために免疫細胞を集めようとします。この時、血管の壁に「隙間」が作られ、そこから水分が染み出しやすくなります。
血管のバリアが開いてしまう
アレルギー反応で放出されるヒスタミン免疫細胞から放出される化学物質。血管を広げたり、かゆみを引き起こしたりする。や、慢性炎症に関わるサイトカイン免疫細胞から分泌されるタンパク質。炎症の強さを調節する信号の役割を持つ。といった物質は、血管の内側の細胞を収縮させ、細胞同士の結合を緩める作用があります。
日本薬理学会誌などの報告によると、これにより血管の透過性が高まり(水漏れしやすくなり)、血液中の水分やタンパク質が血管の外へ漏れ出すことで「浮腫(むくみ)」が形成されます。[1]出典:J-STAGE (Nihon Yakurigaku Zasshi)
ソースを確認する[2]出典:NIH / PMC (Inflammatory Cytokines in Vascular Dysfunction)
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2. パンや麺に潜む「隠れ塩分」と炎症
むくみの原因として有名な「塩分(ナトリウム)」ですが、実は単に水を溜め込むだけでなく、塩分そのものが炎症を引き起こす可能性が指摘されています。
塩分は皮膚に「貯蔵」される
かつて塩分は全身に均一に分布すると考えられていましたが、最新の研究では「皮膚や筋肉に高濃度で貯蔵される」ことが明らかになっています。皮膚に蓄積された過剰なナトリウムは、免疫細胞を刺激して炎症を引き起こし、さらにリンパ管の機能を低下させて水はけを悪くする可能性があります。[3]出典:NIH / PMC (Is salt sensitivity a disorder of the immune system?)
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意外と多い加工食品の塩分
特に注意が必要なのが、パンやうどんなどの小麦製品です。グルテンの網目構造を作るためには塩が欠かせないため、想像以上に多くの塩分が含まれています。
食パン100g(6枚切り約1.5枚分)あたり約1.1gの食塩相当量が含まれる。(中略)干しうどん(乾麺)は食塩相当量が約4.3g/100gと極めて高い。 出典:文部科学省 / 消費者庁 [4]出典:文部科学省 / 消費者庁 (日本食品標準成分表2020年版)
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ラーメンやうどんのスープを飲み干すと、たった1食で1日の塩分推奨量を超えてしまうことも珍しくありません。
3. グルテンと「むくみ」の意外な関係
小麦に含まれるグルテンに対する反応も、むくみの原因となり得ます。
アレルギー性の浮腫
小麦アレルギーの一種である「小麦依存性運動誘発アナフィラキシー」の症例では、パンを食べた後に運動することで、まぶた(眼瞼)や顔面が激しくむくむ症状が報告されています。[5]出典:NIH / PMC (Hydrolyzed wheat protein…)
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非セリアック・グルテン過敏症(NCGS)
アレルギー検査で陰性であっても、小麦摂取によって不調が出るNCGSの患者において、全身のむくみや手指の腫れなどの症状が現れることが知られています。これは腸内での炎症が全身に波及しているサインである可能性があります。[6]出典:NIH / PMC (Non-celiac gluten sensitivity)
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4. 「ゆるやか」な実践へのアドバイス
しつこいむくみに対処するために、日々の食事で意識できるポイントです。
- 「隠れ塩分」を減らす: パンや麺類を控え、塩分添加の少ない「米(ご飯)」を中心にするだけで、無意識の塩分摂取を大幅に減らせます。
- カリウムを摂る: 野菜や果物に含まれるカリウムは、余分なナトリウムの排出を助けます。
- 炎症の元を断つ: むくみが続く場合、試験的に2週間ほど小麦製品を控えてみて、顔や手足の感覚が変わるか観察してみましょう。
参考文献・出典
- [1] Mechanisms of vascular permeability in allergic inflammation. J-STAGE (Nihon Yakurigaku Zasshi), 2025.
- [2] Inflammatory Cytokines in Vascular Dysfunction and Vascular Disease. NIH / PMC.
- [3] Is salt sensitivity a disorder of the immune system? NIH / PMC.
- [4] 日本食品標準成分表2020年版(八訂). 文部科学省 / 消費者庁.
- [5] Hydrolyzed wheat protein wheat-dependent exercise-induced anaphylaxis. NIH / PMC.
- [6] Non-celiac gluten sensitivity: clinical manifestations and mechanisms. NIH / PMC.
