本記事は、公的機関および学術論文により報告されている情報を整理したものです。特定の疾患の診断や治療を目的とするものではありません。日常生活に支障をきたすほどの生理痛がある場合は、子宮内膜症などの可能性がありますので、必ず婦人科にご相談ください。
「鎮痛剤が手放せないほどの生理痛がある」「生理前になると心身ともに絶不調になる(PMS)」。
こうした悩みの背景には、子宮だけでなく、全身の「炎症レベル」が関わっている可能性が、近年の研究で明らかになってきました。
本記事では、生理痛の痛み物質と食事の関係、そしてグルテンフリーの真偽について、最新の医学データをもとに解説します。
1. 痛み物質「プロスタグランジン」と炎症の連鎖
生理痛の直接的な原因は、子宮内膜から分泌されるプロスタグランジン(PGs)子宮を収縮させて経血を排出させる役割を持つ生理活性物質。過剰に分泌されると血管を収縮させ、強い痛みや炎症を引き起こす。という物質です。
「くすぶった火事」が痛みを増幅させる
研究によると、生理痛が重い女性は、生理期間以外でも体内の炎症レベル(CRP値)が高い傾向にあることが分かっています。
日頃から炎症を促進するような食事(加工食品、糖質の摂りすぎなど)を続けていると、体全体が「ボヤ火事」のような状態になります。この状態で生理が始まると、子宮での炎症反応が増幅され、痛みがより激しくなると考えられています。[1]出典:Mattioli 1885 (Progress in Nutrition)
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2. 「グルテンフリー」は生理痛に効くのか?
「小麦をやめると生理痛が軽くなる」という話を耳にすることがありますが、科学的な根拠はあるのでしょうか。
大規模調査では「関連なし」
米国で約8万人以上の女性を対象に行われた大規模な追跡調査では、グルテンの摂取量と子宮内膜症(重い生理痛の原因となる疾患)のリスクとの間に関連性は認められませんでした。[2]出典:ResearchGate (The Journal of Nutrition)
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つまり、グルテン自体が直接的に生理痛を悪化させる犯人である可能性は低いとされています。
なぜ「効いた」と感じる人がいるのか?
一方で、グルテンフリー食で症状が改善したという報告もあります。最新の研究では、これはグルテンではなく、同時に除去されるFODMAP(フォドマップ)発酵性の糖質群。小麦に含まれるフルクタンなどが含まれる。腸内でガスを発生させ、腹部膨満感の原因となる。の影響が大きいと分析されています。
パンやパスタを控えることで腸内のガスや張りが減り、それが骨盤内の不快感や痛みの軽減につながっている可能性があります。[3]出典:Molecular Nutrition & Food Research
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3. 日本人女性の盲点「魚不足」
実は、日本人女性の生理痛にとって、グルテンよりも深刻な問題が指摘されています。
魚を食べない人は生理痛が重い?
順天堂大学などの研究チームが日本人女性を対象に行った調査では、生理痛が重いグループは、軽いグループに比べて「魚(動物性タンパク質)」や「ビタミンD」の摂取量が有意に少ないことが明らかになりました。[4]出典:Healthcare / PMC
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- オメガ3脂肪酸の不足: 魚に含まれるEPAやDHAには、炎症や痛みを抑える働きがあります。魚不足は、痛みを強める物質(炎症性プロスタグランジン)が作られやすい体質を招きます。
- ビタミンD不足: 免疫を調整するビタミンDの不足も、痛みやPMSのリスク因子となります。
4. 「ゆるやか」な実践へのアドバイス
生理痛を和らげるための、科学的に理にかなった食事のポイントです。
- 魚を意識して食べる: 週に数回は青魚(サバ、イワシなど)や鮭をメニューに加えましょう。難しい場合はサプリメントの活用も検討を。
- 「抗炎症」の食事: 小麦を完全に断つ必要はありませんが、甘いパンやお菓子などの「炎症を招く食品」を減らし、野菜や海藻を増やすことが先決です。
- 朝食を抜かない: 朝食欠食も生理痛のリスク因子とされています。体内時計を整えることが、ホルモンバランスの安定につながります。
参考文献・出典
- [1] Relationship between Dysmenorrhea, Dietary Inflammatory Index… Progress in Nutrition, 2021.
- [2] Glycemic Index… and Gluten Intake and Risk of Laparoscopically-Confirmed Endometriosis… The Journal of Nutrition, 2022.
- [3] Effect of Gluten Ingestion and FODMAP Restriction… Molecular Nutrition & Food Research, 2021.
- [4] Severity of Menstrual Pain Is Associated with Nutritional Intake… Healthcare, 2023.
