三温糖は体にいい?白砂糖との違いを成分表で比べてみた

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の食品や治療法を推奨するものではありません。体調や持病に関して不安がある場合は、自己判断せず医師または管理栄養士にご相談ください。

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「茶色い砂糖のほうが体にいい」——その印象、データで確かめると

スーパーの製菓材料コーナーで、白い砂糖の隣にちょっとだけ茶色い「三温糖」が並んでいます。なんとなく「精製度が低そう」「白砂糖よりミネラルが多そう」と感じて、三温糖を手に取った経験はないでしょうか。

結論から言うと、三温糖と上白糖の成分差はごくわずかで、体内での代謝経路にも違いは確認されていません。文部科学省の食品成分表日本国内で流通する食品の標準的な栄養成分値をまとめた公的データベース。文部科学省が公表し、栄養指導や食品表示の基礎情報として用いられる。と複数の査読論文を照らし合わせると、「茶色=健康的」というイメージは、数字の裏付けが極めて弱いことが見えてきます[1]出典:文部科学省 食品成分データベース
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この記事では、三温糖と白砂糖を「ショ糖含有率」「ミネラル量」「代謝経路」「食品表示ルール」の4つの軸で公的データに沿って比較し、最後に「本当に差のある甘味料」についても触れていきます。

1. 三温糖と上白糖、成分表の数値はほぼ同じ(文部科学省 食品成分表)

まず一次情報として、文部科学省「日本食品標準成分表日本国内で標準的に流通する食品の栄養成分値を、文部科学省が公表する公的データ。八訂増補2023年版が現行最新版。八訂増補2023年」に収載されている主な甘味料の数値を並べてみます[1]出典:文部科学省 食品成分データベース
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[2]出典:文部科学省 食品成分データベース(三温糖)
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[3]出典:文部科学省 食品成分データベース(てんさい含蜜糖)
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主な甘味料の成分(100g当たり)

甘味料 位置づけ ショ糖 (g) Ca (mg) Mg (mg) K (mg)
上白糖 精製糖 97.9 1 Tr(微量) 2
三温糖 精製糖 約97 6 2 13
てんさい含蜜糖 含蜜糖 85.1 Tr 0 27
きび砂糖相当(市販分析値) 未精製サトウキビ糖 91.5〜92.8 30.0〜45.2 11.7〜25.4 110.0〜227.7

上白糖と三温糖の差は、100g当たりでカルシウム +5mg、マグネシウム +2mg、カリウム +11mg。料理で実際に使うのは数g〜10g程度ですから、実使用量に換算すれば、ミネラル摂取への寄与はほぼゼロに近い水準です。

三温糖の「茶色」はどこから来るのか

三温糖は、サトウキビやテンサイから上白糖をつくった後の糖液をさらに煮詰める過程で生じるカラメル成分によって茶色く色づきます。文部科学省「砂糖及び甘味類 食品群別留意点」では、三温糖は「精製糖製造工程で上白糖の後段で製造される」とされ、一部製品ではカラメル色素を用いて色を補う製品もあると記載されています[4]出典:文部科学省 砂糖及び甘味類 食品群別留意点(八訂)

つまり「茶色いから廃糖蜜(黒糖の元)に近い未精製の砂糖」というのは正確ではなく、精製度合いはむしろ上白糖と同じか、それに準じる位置づけです。

2. ショ糖の代謝に「白い/茶色い」は関係しない

砂糖の主成分であるショ糖は、小腸のスクラーゼ・イソマルターゼ小腸の粘膜に存在する消化酵素。ショ糖をブドウ糖と果糖に分解する役割を担う。という消化酵素によって、ブドウ糖と果糖に分解されます。この代謝経路は三温糖でも上白糖でも変わりません。色や精製度合いによって別ルートを通るという一次情報は、公的資料・査読論文のいずれにも確認できませんでした。

健康影響を左右するのは「色」ではなく、摂取される糖の総量と種類です。ここを示す代表的なRCT(ランダム化比較試験)が、Stanhope KLらが2009年に Journal of Clinical Investigation米国臨床研究学会が発行する査読付き学術誌。生命科学・臨床医学領域で歴史ある雑誌のひとつ。 に報告した10週間の介入試験です[6]出典:Stanhope KL et al. (2009) Journal of Clinical Investigation
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果糖を加えた飲料を摂取した群でのみ、肝臓での新生脂肪合成(de novo lipogenesis)、食後中性脂肪、apoB、small dense LDL、酸化LDLの増加、およびインスリン感受性の低下が観察された。出典:Journal of Clinical Investigation (Stanhope KL et al., 2009)

2021年に Journal of Hepatology に掲載された Geidl-Flueck らのRCTでも、果糖・ショ糖飲料はブドウ糖飲料と異なり、肝臓の新生脂肪合成を促進することが確認されています[7]出典:Geidl-Flueck B et al. (2021) Journal of Hepatology
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つまり問題視されているのは、「砂糖の色」ではなく「果糖を含む糖を、飲料などで一度に大量に摂ること」。色を変えても、ショ糖である以上ブドウ糖と果糖を半分ずつ供給する事実は変わりません。

3. WHOと日本糖尿病学会が示す「摂りすぎの基準」

では、どのくらいまでが許容範囲なのか。WHOは2015年のガイドラインで、遊離糖類食品メーカーや調理者が加える糖類に加え、はちみつ・シロップ・果汁などに天然に含まれる糖類を指す。果物そのものに含まれる糖は含まれない(WHO定義)。について、次のように勧告しています[8]出典:WHO (2015) Guideline: Sugars intake for adults and children

成人および小児における遊離糖類の摂取を、総エネルギー摂取量の10%未満に減らすことを強く推奨する。さらに、5%未満への減少は追加の健康上の利益をもたらす(条件付き推奨)。出典:WHO Guideline: Sugars intake for adults and children (2015)

2,000kcal/日の食事の場合、遊離糖類はおよそ50g未満(できれば25g未満)が目安となります。砂糖大さじ1杯が約9gですから、清涼飲料水を1本飲むと簡単に上限の半分以上を消費する計算です。

一方、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、糖類の数値基準は設定が見送られています(国内の摂取量把握が困難であることが理由)[9]出典:厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2025年版)。日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」は、砂糖入り飲料(SSB)の摂取が2型糖尿病発症リスクを高める(相対リスク1.28)と整理しています[10]出典:日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン2024

三温糖か白砂糖かを選び分けるよりも、合計量を25〜50g/日の範囲に収めることのほうが、健康への影響としてははるかに大きいというのが、公的機関の示す優先順位です。

4. 食品表示で「砂糖は健康にいい」と書けない理由

消費者庁の「食品表示基準Q&A」では、原材料名表示について、同種の原材料は「糖類(砂糖、ぶどう糖)」などとまとめ書きしてもよいとされています[11]出典:消費者庁 食品表示基準Q&A。三温糖や上白糖が個別に強調表示される根拠は、表示ルール上では特にありません。

また「砂糖不使用」と表示できるのは、糖類無添加基準を満たした場合に限られます。さらに、機能性表示食品制度では、糖類の過剰摂取につながる食品は対象外とされており、砂糖そのものに健康強調表示を載せる経路は事実上閉ざされています。

これは「砂糖が悪」ということではなく、「種類によらず、ショ糖の摂取量自体に健康強調表示を認めるエビデンスがない」という制度設計の表れと読めます。

5. 「本当にマシな甘味料」はあるか

では、甘味料を選ぶときに意味のある違いはどこにあるのか。成分表と査読論文を見る限り、注目に値するのはてんさい含蜜糖です[3]出典:文部科学省 食品成分データベース(てんさい含蜜糖)
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てんさい含蜜糖:オリゴ糖含有という違い

  • 食物繊維 8.3g/100g
  • ラフィノース 4.7g/100g
  • 1-ケストース 0.6g/100g

これらのオリゴ糖は文部科学省成分表に明記されています。1-ケストースフラクトオリゴ糖の一種。腸内のビフィズス菌などの善玉菌に利用されることが報告されている。については、Koga Y. らが2016年に Pediatric Research で報告した臨床試験で、12週間の摂取により腸内の Faecalibacterium prausnitzii が約10倍に増加し、症状改善との関連がみられたとされています[12]出典:Koga Y. et al. (2016) Pediatric Research
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ただし注意点もあります。料理で甘味料として使う量はせいぜい10g前後ですから、そこから摂れる1-ケストースは0.06g程度。「てんさい糖だから腸活になる」と一般化するのは、エビデンスの範囲を超えています。あくまで「上白糖や三温糖よりは成分表上の差がある」程度に捉えるのが妥当です。

みりん・きび砂糖はどう位置づけるか

本みりんは、ショ糖ではなくブドウ糖・オリゴ糖を主体とする発酵調味料で、和食調理での糖質としての位置づけは砂糖と異なります。きび砂糖相当の市販製品は、Ueda らの分析でカルシウム30〜45mg、カリウム110〜228mg/100gと、上白糖より明確に多いミネラルが報告されています[5]出典:Ueda K. et al. (2016) Sugar Tech
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。ただし製品間の差が大きく、選ぶ際は栄養成分表示の確認が前提になります。

エリスリトール等の代替甘味料は「無条件で安全」ではない

羅漢果抽出物などの天然系甘味料はFDAのGRAS判断に異議が出ていない一方、エリスリトールについては、2023年に Nature Medicineネイチャー・パブリッシング・グループが発行する医学系査読誌。臨床医学領域でインパクトの高い研究を掲載する。 に掲載された Witkowski らの研究で、主要心血管イベントとの関連や血栓形成促進が報告されました[13]出典:Witkowski M. et al. (2023) Nature Medicine
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。NIHも長期リスクの追加検討が必要との立場を示しています。「カロリーゼロ=安心」と単純化できる段階ではないことに留意が必要です。

6. まとめ:「色」ではなく「量」と「種類」を見る

ここまでを整理します。

  • 三温糖と上白糖は、ショ糖含有率もミネラル量もほぼ同じ(文部科学省 食品成分表)。三温糖の茶色はカラメル成分やカラメル色素由来で、未精製の証拠ではない。
  • ショ糖の代謝経路は三温糖と白砂糖で違いがない。健康への影響は「色」ではなく、摂取量と糖の種類(特に果糖)で決まる。
  • WHOは遊離糖類を総エネルギーの10%未満(できれば5%未満)に抑えることを勧告。三温糖か白砂糖かの選択より、合計量を25〜50g/日に収めるほうがはるかに重要。
  • 食品表示ルール上、砂糖そのものに健康強調表示を載せる経路は実質的に存在しない。
  • 成分表で意味のある差があるのはてんさい含蜜糖(オリゴ糖含有)。ただし通常使用量での寄与は限定的で、過剰な期待は禁物。
  • エリスリトールなどの代替甘味料も「無条件で安全」とは言い切れない段階。

三温糖を選んでも、罪悪感を減らす効果以上に栄養学的な意味はありません。大事なのは、どの砂糖を選ぶかではなく、砂糖を含む食品全体の量を意識すること。これが、公的データと査読論文から読み取れるシンプルな結論です。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の食品や治療法を推奨するものではありません。糖尿病など糖質摂取に注意が必要な持病をお持ちの方、体調や食事に不安がある方は、必ず医師または管理栄養士にご相談ください。

参考文献

  1. 出典元:文部科学省 食品成分データベース(上白糖)https://fooddb.mext.go.jp/
  2. 出典元:文部科学省 食品成分データベース(三温糖)https://fooddb.mext.go.jp/
  3. 出典元:文部科学省 食品成分データベース(てんさい含蜜糖)https://fooddb.mext.go.jp/
  4. 出典元:文部科学省 砂糖及び甘味類 食品群別留意点(日本食品標準成分表八訂)
  5. 出典元:Ueda K. et al. (2016) Sugar Tech https://www.jstage.jst.go.jp/
  6. 出典元:Stanhope KL et al. (2009) Journal of Clinical Investigation https://www.jci.org/articles/view/37385
  7. 出典元:Geidl-Flueck B. et al. (2021) Journal of Hepatology https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32956761/
  8. 出典元:World Health Organization (2015) Guideline: Sugars intake for adults and children
  9. 出典元:厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2025年版)
  10. 出典元:日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン2024
  11. 出典元:消費者庁 食品表示基準Q&A
  12. 出典元:Koga Y. et al. (2016) Pediatric Research https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26551440/
  13. 出典元:Witkowski M. et al. (2023) Nature Medicine https://www.nature.com/articles/s41591-023-02223-9
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この記事を書いた人

葛西 利昭のアバター 葛西 利昭 編集長
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